薬膳とは?【薬膳理解のための3つのキーワード】

様々な生薬が入った薬膳鍋は、”食べる漢方薬”!

こんにちは!今回は、薬膳を理解するための3つのキーワードについてお話しします。

なんとなく薬膳に興味がある、体調がすぐれないから、体に良い食事を考えたい。薬膳に興味を持つ方は、そんな想いや悩みがある方が多いのではないでしょうか。

「でも、そもそも薬膳ってなんだっけ?」

「結局、ナツメとかクコの実を入れた薬膳鍋のことでしょ?」

実際は薬膳に興味があっても、”単に体に良さそうな材料を使った料理”という認識をお持ちの方も多いと思います。でもね、薬膳って何千年もの歴史があって、漢方の考え方を応用したとても理論的で、それでいて実践的な考え方なんです!

薬膳を理解するための3つのキーワードとは、ズバリこちらです!

  1. 未病
  2. 陰陽五行説
  3. 薬食同源

この3つを知れば、難しそうと思っていた薬膳がとても面白いものに。この記事を最後まで読んで、本格的に薬膳を勉強したい!と思ってもらえたらうれしいです。

1.薬膳とは、未病を治すもの

未病という言葉を聞いたことがありますか?有名な「薬用養〇酒」のCMでも使われていましたから、ご存じの方も多いと思います。

未病とは、漢方医学で特に重要とされる考え方です。

現代医学では、病気か健康か、という概念しかありません。たまに片頭痛がする、生理痛がひどい、最近なんだか体がだるい。でもこれらの症状は、ふつうは病院に行って検査をしても特に異常は見当たりません。結果、その場しのぎの痛み止めをもらって何とかやり過ごす。でもしばらく経ったらまた同じ症状で苦しむ。こんな経験をした方も多いと思います。

現代医学では病気とされない”病気”、でも自覚症状は確かにある。これを漢方の考え方で未病と呼ぶのです。

漢方で、現代医学が匙を投げた病気が治った、なんて話をよく聞きますが、現代医学ではそもそも定義されない未病に対処する方法があるのが、その理由なんですね。

中国の伝説的医師 扁鵲

今からおよそ2400年前、春秋戦国時代の中国に扁鵲(へんじゃく)というお医者さんがいました。

扁鵲は中国医学の祖と呼ばれ、西洋医学の祖であるヒポクラテス、古代インドの名医耆婆(ジーヴァカ)とともに、世界三大名医と称される伝説的名医です。

そんな扁鵲には、こんなエピソードがあります。

古代中国の名医 扁鵲

ある時、時の皇帝文公が名医で名高い扁鵲に会い、こう問いました。

文公:あなたたち兄弟三人の中で、一番医術に優れているのはだれか?


扁鵲:長兄です。その次が次兄で、私の医術が最も劣っています。

当時すでに名医としての誉れ高い扁鵲のこの答えに、文公は意外に思い、さらに問いました。


文公:それではなぜあなたの名声だけが聞こえるのか?

すると扁鵲はこう答えました。


扁鵲:長兄は人を診察する時、病気になる前に治してしまいます。ですから長兄の名前はその家の者しか知りません。
次兄は、患者の容体が軽いうちに治してしまいます。そこで次兄の名は、村の者しか知りません。

しかし私ときたら、患者が病気になってはじめて病を治すことができるのです。私がよく大病を治すので、私の名は遠く諸侯に聞こえているのです。

未病の段階から対処することの大切さ

扁鵲のエピソードは、未病の段階から不調を治すことの大切さを物語っています。

冷え性、不眠、生理痛、疲れ。これらは全て未病です。現代医学では病気と定義されないこういった不調が、医療が発達していない昔は、命の危険につながるような病気の原因になるかも知れません。だから未病の段階からその不調を取り除くことが、漢方医学の本質なのです。

2.薬膳の基本理論、陰陽五行説

薬膳は、ただ何を食べれば良いという食事法のようなものを指すものではありません。数千年の歴史が作り上げた理論と、経験に裏打ちされた、立派な学問なんです。

その理論のベースとなるのが、陰陽五行説といわれるものです。

陰陽とか五行というと、陰陽師を連想しますが、その陰陽です。確かに風水や占いと関連付けられてきたので、非科学的なニオイがプンプンしますが、もともとは長い歴史の中で人々が人体や自然を観察する中で生み出した、とても合理的な考え方なんです。

その内容は、とっても簡単に言うと、この世のあらゆるものは、木・火・土・金・水の5つの要素からできていて、私たち人間が摂るべき食事の内容や病気の種類、その治療法などをこの5つの分類に当てはめるということなんです。

これだけ聞いてもよく分からないと思いますので、詳しくは別の機会に解説しますね。ここでは、この陰陽五行説がいかに私たちの生活に密接に関わっているかという例をご紹介します。

日本の国技に根ざす五行

これは大相撲の土俵です。相撲の土俵の上には「吊り屋根」がありその四角に房がぶら下がっています。東西南北の順に、青・白・赤・黒。上に五行の表を見てください。まさにぴったりですね。色が一つ足りないですが、それは中央の土俵、つまり黄色です。さらに、行司さんが持っている軍配に描かれているのは、陰陽を象徴する月と太陽!日本の国技である相撲にも、陰陽五行説の考え方が表れていますね!

あの昔話にも陰陽五行説が!?

これは十二支の図です。十二支も古代中国で生まれた考え方で、陰陽五行と同じく、長い歴史を持っています。いつしかこれらの思想は関連付けられるようになっていきますが、面白いのは、日本での発展の仕方です。

まず、北の方角から十二支を時計回りに配置していきます。すると、西の方角に当たる五果(ごか、古代中国で重要とされた五つの果物)は桃です。そして、その桃の取り囲むようにイヌ、トリ、サルがいます。

そして、古来より不吉な方角とされた鬼門(北東)にはウシとトラがいます。

ここでピント来た方もいるかと思います。そうです。牛の角とトラ柄のパンツを穿いた鬼ですね!

というわけで、正解は桃太郎でした!

桃太郎の家来がイヌ、トリ、サルなのはなぜか?鬼はどうしてあのデザインなのか?これらは全て、陰陽五行説にそのルーツがあるんです!

この他にも、最近すっかり関東でも定着した恵方巻や見ざる・聞かざる・言わざるの三猿など、陰陽五行説から出た風習はたくさんあります。それだけ陰陽五行は日本人の暮らしにも根付いているんです。

3.薬膳とはすなわち、薬食同源

3つのキーワドの最後は薬食同源です。

医食同源というワードを聞いたことはないでしょうか?実はこれ同じ意味なんです。もともと中国から伝わった言葉は薬食同源でした。ところが、1972年にNHKの「きょうの料理」という番組で薬膳を扱った際に、”薬”ではイメージが悪いという理由で、医食同源という言葉に変えてしまったのです。それ以来、日本では医食同源という言葉が広まったそうです。恐るべしNHKのパワーですね!

さて、薬食同源とはどういった意味なのでしょうか?

昔の中国の宮廷には、皇帝をはじめ貴族の健康を守る医師団がいました。その医師団の中でも、内科や外科といったように専門分野ごとに階級が分かれていたのですが、その中で最高クラスに位置付けられていたのが、「食医」と呼ばれる医師団です。

「食医」は、日々の食事を通じて貴族の健康を管理するいわば管理栄養士でした。現在ではもちろん、医師としては見なされていない職業ですが、当時は医師の中でも最も重要な仕事だったんです。”病気を治す”お医者さんよりも、”病気にさせない”お医者さんが、いかに重視されていたかが、よく分かりますよね。

「チャ〇グム」も宮廷お抱えの食医だった。

まとめ

いかがだったでしょうか?

このブログを見て頂いているのは、少しでも漢方や薬膳に興味がある方だと思います。私が今までお会いした多くの薬膳好きの方々は、健康リテラシーも高く、料理もとても上手な方ばかりでした。

一方で、薬膳と聞くと必要以上に構えてしまったり、難しいものと考えている方も少なからずいました。そのような方や、料理は決して得意ではないけど、健康に気を遣った食事を心掛けたいという方にも、分かりやすく、面白く薬膳の魅力をお伝えしていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

次回は薬膳の基本である、五味・五性・帰経について解説していきます!

Follow me!

  • X